



一般社団法人ONSEN文化協会
Japan ONSEN Culture Association


日本の癒やし文化
“ONSEN”を
世界に向けて発信
異文化を体験することの楽しみ
数年前、有馬温泉での出来事。 ひとり静かに素晴らしい源泉を楽しんでいたところ、多勢の外国人客が一斉になだれ込み、身体も洗わず、タオルを浴槽に浸し、ブールのように泳ぎ大騒ぎしていました。 他の日本人客は早々に退出してしまい、せっかくの温泉の雰囲気も台無しになった経験をしたことがあります。彼らは、悪気があってやった行為ではなく、単に日本の入浴マナーや温泉文化を知らなかっただけなのです。
日本は世界屈指の温泉大国で、世界に冠たる入浴文化を持つ民族だといわれいます。 火山の多い国土のいたるところに温泉が湧き出でている恵まれた自然環境に加え、古来の温泉信仰とともにあった温泉利用・活用から生み出される入浴文化である湯治の伝統と、温泉を利用する場である浴槽や湯屋、旅館つくりから生み出された伝統的な建築工芸文化、温泉地の形成を通じて生まれた温泉宿場文化などが日本人独特の温泉観、温泉文化をつくりだしてきたといえます。 古来より温泉は神聖な場所とされ、 病気や怪我を癒す不思議な水として利用され、人々は畏敬の念を抱いて接してきました。 それは、人間の理解を超えた自然への畏れであり、温泉地には数多くの薬師寺や神社とともに、 温泉にまつわる風習や伝説、入浴方法が数多く存在します。
期待の割には温泉を体験している旅行者が少ない
観光庁の「訪日外国人消費動向調査(平成22年版 ~25年版)」における「次回実施したい活動」に関するアンケート調査によれば、訪日外国人 の「温泉入浴」に対する関心度合は近時高い水準で 推移してきており、「日本食を食べること」との間で1、2位を競う状況が続いています。 しかしながら、 関心の高さの割に実際に温泉を体験している人が少ない状況であります。 その背景として、温泉には、日本人にとっては 当たり前でも外国人は知らない様なマナーがいくつか存在することや、多種多様な日本の温泉に関する情報発信不足といった側面が挙げられます。 わたしたち協会は、こうした日本の温泉文化とそれを支えてきた温泉地や風習を積極的に世界に語り伝えていくことで、観光大国を目指すお手伝いができればと考えています。
訪日外国人旅行者の信頼獲得を目指して
わたしたち協会は、日本の温泉文化(観光資源の魅力を引き出し)を海外に広め、温泉文化の継承と活性化・発展に資する事を目的とし、 全国各地の温泉施設に関わる人や一般の日本人が訪日外国人旅行者を誘致し、国際交流を実施うる為に講習会を行うことになりました。 この意図が皆様に理解されて、国際的に日本の温泉が見直され、より深い温泉文化、意義のある活用がなされることを期待しております。
日本の温泉文化は、人が温泉と出会い、利用するようになって育まれたものです。 人無しでは文化は生まれません。 我々日本人が温泉との出会いに感じる喜びや感動を訪日外国人にも体験してもらい、情報のみの発信だけではなく、人と人が触れ合う異文化交流を通じて日本の温泉文化を外国人旅行者が体験(ふれあい)する事で、 また日本のお湯に浸かりたいと思ってもらう事を期待しております。 そういった活動を地道に継続する事ではじめて日本が観光大国になるべき本来の姿と思います。
時代とともに温泉の楽しみ方は変化してきましたが、温泉は心身を癒してくれる、という認識は現在でも変わりありません。 海外に向けてこの“癒し文化”を広めていく所存でございます。
2016年2月
一般社団法人ONSEN文化協会
代表理事 榊 俊一